縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
本殿の中は狭くて人が近くにいればすぐに気配でわかる。
相手は少し離れた場所にいるみたいだ。

だけど確かに相手の息遣いを感じる。
返事をしないとことを見ると、不意に薫子に襲いかかるつもりなのかもしれない。

警戒心を強めてすぐにでも外へ出られるように、手探りで扉を探す。
と、そのときだった。

不意に暗闇の中にポウッとオレンジ色の光が現れて薫子は驚きのあまりその場に尻もちをついてしまった。
「な、なに!?」

混乱する薫子の前でオレンジ色の小さな火がゆらゆらと揺れた。
その火はひとつからふたつ、みっつと増えてあっという間に本殿の中を昼間のような明るさにしてしまった。

火はろうそくに灯されているわけでもなく、ゆらゆらと空中に浮いているのだ。
信じられない光景に薫子が驚いていると、明るくなった本殿に1人の男性が立っていることに気がついた。
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