縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
男性は白い着物を着ていて、銀色に輝く髪の毛を持っていた。
「銀色の髪……」

不思議なことは沢山あったけれど、赤毛を持つ薫子にはその髪色が一番目を引くことだった。
男の銀髪は腰ほどの長さがあり、それをひとまとめにしている。

けれど顔の輪郭を隠すように左右にあえて結んでいないひと束があった。
「誰だ?」

そのとき始めて相手が厳しい視線をこちらへ向けていることに気がついた。
つり上がった目に、人を刺すような視線。

本殿の室温が1度下がったような気がして、薫子の身体に冷たいものが走った。
「わ、私は薫子」

震える声で答えると男は少しだけ目を見開いて「お前が生贄の花嫁か」と、つぶやいた。
どうしてそのことを知っているんだろう。

もしかしてこの人は盗賊の1人だろうか。
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