縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
そのわりにいい着物を着ているみたいだけど、もしかして盗んできたものかもしれない。
グルグルと思考を巡らせていると、いつの間にか男が薫子の前にあぐらをかいて座っていた。

「私は切神。ここに祀られている、あれだ」
男はそう言うと御神体の剣を指指した。

「え……あなたが神様?」
薫子は剣と男を交互に見て息を飲む。

だって、縁切りの神様はとても恐ろしいのだと聞いていたから。
目の前にいる男は村にいる男衆となにも変わらないように見える。

むしろ、村にいる男衆よりもはるかに整った顔立ちをしていて、薫子はさっきからドキマギしていた。
「そうだ。生贄の花嫁が来たことは聞いていた。なんの願いだ?」

そう質問されて薫子はやっと自分の役目を思い出した。
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