縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
すっかり落ち込んでしまった聞くのを励ますように薫子は言った。
薫子は生まれつき赤毛であったことから、生まれてすぐ両親から捨てられてしまった。

カゴに入れられ、川に流されているところをここの村人が助けてくれたのだ。
以来、薫子はこの村で沢山の人たちの手をかりて生きてきた。

ここの村人たちの心が優しいことだって、誰よりも知っている。
「千桜と冴子は大丈夫かしら」

薫子と菊乃と同年代の女が村にはもうふたりいて、それが千桜と冴子だった。
ふたりは川魚の買い物へ使いへ向かったのだ。

薫子たちが向かったのは逆方向にある店だから、きっと大丈夫だとは思うけれど……。
「あのふたりなら大丈夫よ」

きっぱりと言い切ったのは菊乃だった。
その顔には苦笑いが浮かんでいる。

千桜と冴子は同い年の女とはいえ男勝りで、1度男たちにまざって盗賊を村から追い払ったこともある。
そのときのことを思い出して薫子もつい笑ってしまった。
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