縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
こうして間近で見てみると決めが細やかで美しい神様だ。
村の人たちしか知らない薫子にとって、異国の人のような感覚を覚える。

思わずギュッと両目を閉じた。
このままグワッと口を開けて食べられてしまうのかもしれない。

その覚悟を決めて呼吸を止める。
と、その瞬間だった。

柔らかくて暖かな感触が香るこの口元に振ってきて、驚いて目を開けた。
見ると目を閉じた切神の顔がすぐ近くにある。

薫子に触れているのは切神の唇だった。
驚いて声をあげようにも、唇を塞がれているからどうしようもない。

薫子はしばらく放心状態のようになって動けなかった。
やがて切神は薫子から身を離して「今日はこれくらいにしておこう」と、自分の布団へ戻ったのだった。
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