縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
☆☆☆

食事を終えると切神は薫子を連れて屋敷の案内をしはじめた。
神社を表から見るととても小さくて本殿しかないようだったが、中にはいると次から次へと部屋が出てくる。

そのどれもが天井やふすまに美しい装飾がほどこされていて、部屋を見るたびに薫子は嘆息をするはめになった。
「ここが庭になる」

広い廊下から見渡す限りの庭に頭がクラクラしてきた。
「ここは一体なんなんですか? これほど広さがあるなんて……」

庄屋さんのお屋敷よりもずっとずっと広いんじゃないだろうか。
「外からじゃ中の様子はわからないものだからな」

そういうものだろうか。
この屋敷には神様の力が宿っているとしか思えなかった。

「この庭もすごく素敵。下りてみていいですか?」
「もちろんだ」

踏み台石の上にはふたつのわらじが置かれていた。
右手が大きくて、左手に置かれているものが小さい。
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