縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
確かに、あのふたりなら怖いものなしかもしれない。
「一番心配なのは薫子、あんたよ」

「私?」
薫子は驚いて自分のことを指差して首を傾げた。

「年頃だし、それに目立つ」
菊乃の視線は薫子の髪へと向かっている。

陽の光を受けて赤毛がキラキラと輝いている。
一見燃えているようにみえるそれは、盗賊の目にとまれば好奇心を持たれるのは必須だった。

薫子はとっさに硬い表情になり、着物の胸元から手ぬぐいを取り出してそれを頭にまいた。
実の両親からうとましがられた赤髪が見えなくなり、少しだけホッとする。

「でも、私はその髪好きだよ」
「ありがとう」

薫子は軽く微笑むと、まだ身を乗り出して大通りへと視線を向けたのだった。
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