縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
切神がこうして大きな声で笑っているところを始めてみたかもしれない。
いつもの鋭い顔はどこへやら、目尻にシワがよってとても優しく見える。

いや、実際に切神はやさしかった。
生贄としてやってきた薫子に寝床やご飯を与えてくれて、妻だと言ってくれる。

「あの……どうして切神さまはそんなに優しいんですか?」
「私だって、いつも怒りながら縁を切っているわけじゃない。無駄に怒っているわけじゃない」

そう言われればそれは当然のことだった。
誰だって常に怒っているわけじゃない。

縁切りの神様という固定概念が怖いものだと思い込ませてしまっていたみたいだ。
「私、神様のことを誤解していました。もっと怖いと思っていました」

「大抵がそうだ。気にすることはない」
「でも私は。私だけは神様が優しいってわかっていますから」

常に誤解されたままでは誰だって辛い。
それが神様だって同じだろうと薫子は考えた。

真剣そのものの薫子を見て、切神はまた声をあげて笑ったのだった。
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