縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
☆☆☆

切神の妻として迎えられてから一週間が経とうとしていた。
盗賊がいなくなったことで村は安定していて、切神も今は安心して神社にいてくれている。

時折村人たちがもってくるお供えものをふたりで食べたりもした。
「薫子、これをやろう」

ある日庭先に出て植えたばかりの苗の様子を見ていると切神が紙に包まれたなにかを持ってきた。
「種ですか?」

薫子が手の中で紙を開くと、中から小さな種が10粒ほど出てきた。
だけど村では見たことのない種だ。

「この種は地上にはない種だ。見たこともない実がなるぞ」
「ここでも育つんですか?」

「ここは神域だからな。大抵のものがうまく育つ」
そう言われて薫子はさっそく菜園の端にその種を植えた。

「後はほっとけばすぐに芽を出してくる」
切神が言っていた通り、その種の芽は3時間後にはにょきにょきと生えてきていたのだ。

「すごい! こんなに早く成長するんですね」
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