縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
「わからないわよね。だけどどんどん大きくなってる」
薫子が見つめている傍らで、謎の実は大きく成長していく。

切神が言っていた通り、朝起きる時刻になる頃には食べられるくらいになっているかもしれない。
まるで食物の成長を早送りで見ているかのような感覚になって、薫子はその場から離れられなくなってしまった。

こんなにおもしろいものをみたことは今まで1度もない。
ジッと見ている間にだんだん夜が開けてきて、森の動物たちが動く気配を感じ始めた。

その頃には謎の実は赤色に色づいて今にも弾けんばかりに膨らんでいる。
そしてあたりには甘い匂いが立ち込めていた。

「こんなところにいたのか」
呆れ声が聞こえてきて顔を向けると、雨戸を開け放った廊下に切神が立っている。

「切神さま、これってすごいですね! 本当にあっという間に成長して行くんですね!」
興奮気味に言う薫子に、切神も庭へと下りてきた。

そして立派に育った実を見て満足そうに頷く。
「これならもう食べられるだろう」
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