縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
そう言って両手で丁寧に実を支えて持ち、クルリとねじって茎からもぎ取った。
「これって果物ですよね? とても甘くていい匂いがします」

「そうだな。だけどこの食物の力はこれだけじゃない。こっちを見てみるといい」
切神が指差した先にあるのは薫子が植えた食物たちだった。

カブや大根や芋がある。
時期外れに植えたから育たないと諦めていたところだ。

ひょろりと頼りなく出てきた芽が今はヒャキッと立っているのがわかった。
薄い緑色だった葉も今は濃く色づいている。

「え、あれ?」
その変化に気がついた薫子が目を瞬かせた。

自分は夢を見ているんじゃないだろうかと思ったのだ。
だけど目の前の光景は変わらない。

カブ、大根、芋がみるみるうちに成長していくのだ。
「この食物は他の食物たちに栄養を与える。つまり、その土地に植えれば豊作となるんだ」

「そんなものがあるんですか!?」
「残念ながら、これは神域でしか使えないものだけどな」
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