縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
村にいれば友達の菊乃に相談できたことだけれど、ここにいてはそれも叶わない。
薫子の心はいつの間にか疲弊してきていたのだ。

切神はそれに気がついてこの不思議な果物を育てるように言ったに違いなかった。
「ありがとうございます。元気が出ました」

切神の優しさに薫子の胸がジワリと熱くなる。
同時に幼い日に近所に暮らすお兄さんに恋心を抱いたときのことを思い出した。

今の薫子はまさにその時と同じ気持ちになっているのだ。
自分の気持を理解すると同時に顔がカッと熱くなってうつむいた。

「この果物はいくらでも実って、茎についている間は腐ることもない。好きなだけ食べるといい」「はい」
切神の言葉に薫子は小さく頷いたのだった。

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