縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
千桜は薫子を見て大きく目を見開き、口をポカンとあけた。
隣にいる冴子も全く同じ反応を示している。

「ふたりとも、久しぶり」
薫子は嬉しくなってふたりへ駆け寄った。

ふたりの足元にはお供えの大根とカブが置かれていて、思わず笑ってしまった。
村でもちゃんと豊作のようで安心する。

「嘘でしょ薫子、無事だったの?」
ようやく言葉を発した千桜は上から下まで薫子の姿を確認した。

今は切神からもらった赤い着物を来ている。
外行き用の着物だとわかっていたけれど、どうしても袖を通したかったのだ。

「私は大丈夫よ。ふたりは元気だった?」
「え、えぇ元気よ」

冴子が答えてなぜか数歩後ずさりをした。
そして境内の様子を伺っている。

死んでいると思っていた薫子が突然姿を見せて驚いているのかもしれない。
「お供え物をありがとう。今日神様といただくことにするわ」
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