縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
「もちろんよ。神様のこともふたりに紹介したいし」
薫子がそう言って本殿へ足を踏み入れたとき、どこからともなく切神が姿を見せた。

「わぁ!?」
「きゃっ!」

千桜と冴子のふたりが同時に腰をぬかして驚いている。
「切神さま、突然出てきたら驚きます」

薫子は切神へ向けてそう言い、ふたりに手を伸ばして立たせた。
「それは悪かったな」

切神はちっとも悪びれた顔をせずに冷たく言い放つ。
薫子が始めて切神に会った時も神出鬼没だったし、基本的にはそうなのかもしれない。

普段は薫子を驚かせないように人と同じように動いているのだけなのだ。
「か、神様?」

驚いた千桜が目を白黒させて切神を見つめている。
冴子の頬は赤く染まっていた。
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