縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
☆☆☆

部屋を出た薫子はさっそくお茶の準備を始めた。
千桜と冴子も寒い本殿ではなく奥へ案内してあげたい気持ちがあったけれど、切神の手前勝手なことはできなかった。

「本殿に明かりくらい灯してくれたらいいのに……」
切神が用意してくれている火を使ってお湯を沸かしながら薫子は呟く。

今は昼間だから火はなくてもいいと考えたのかもしれない。
だけど薫子は切神の不思議な力をふたりにも見てもらいたいと思っていた。

特殊な火を使えばお湯はすぐに沸き始める。
やかんがシュンシュンと音を立て始めるまでに何分もかからなかった。

薫子はすぐに熱いお茶を入れておまんじゅうを菓子盆に乗せて本殿へと戻っていく。
本殿へと続く戸を開く前に中から人の声が聞こえてきて薫子は足を止めた。

切神はふたりとちゃんと打ち解けているだろうか。
そう思って耳を近づけてみる。

するとまずは冴子の声が聞こえてきた。
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