縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
絶望感が押し寄せてくると同時に薫子は3人に背を向けて駆け出していた。
後ろから千桜と冴子の笑い声が聞こてきて両耳を塞ぐ。

そのまま菜園へと駆け出していた。
心臓がバクバクと高鳴っていて、今にも破裂してしまいそうだ。

目を閉じるとふたりの艶めかしい体を思い出してしまう。
やめてと言いたかったけれど、言えなかった。

あのふたりは村でもいい女として知られているし、決めるのは切神だと判断してしまった。
自分なんかが出る幕ではない。

薫子は大きく実ったカブの前で座り込んでしまった。
自然と涙が溢れてきて肩が震える。

両親に捨てられてこの村へやってきた身。
神様にまで捨てられることになったら一体どこへ行けばいいかわからなくなる。

今度こそ、ひとりぼっちになるかもしれない。
ひとりになる恐怖と切神に捨てられるかもしれない恐怖がないまぜになって涙をそそる。
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