縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
「なにをしてる」
そんな声が聞こえてきて振り向くと、いつの間にか薫子の後ろに切神が立っていた。

薫子は慌てて涙を拭って立ち上がった。
「ち、千桜と冴子はどうしたんですか」

質問する声が震えてしまう。
この質問の答え次第では、自分離縁されることになるからだ。

緊張しながら切神の返答を待っていると、ふわりと両手で抱きしめられていた。
切神の暖かさに涙が引っ込んでいく。

「あのふたりには興味がない」
耳元で囁かれて心臓が高鳴る。

「ほ、本当ですか?」
「あぁ。元々あのふたりは村でも男好きで評判があったはずだ。それを私が知らないと思ったか?」

確かに、あのふたりは少々男好きな面があった。
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