縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
「生贄か……しかしそれは結局村から死者を出すことになる」
村の長が腕組みをしてうなりながら目を閉じた。

生贄ということばに薫子と菊乃は不安そうに目を見交わせた。
神様への生贄として捧げられるのは、若い女と決まっている。

その方が神様が喜ぶからだ。
「盗賊に殺されるか、生贄として死ぬか」

誰かがぽつりとつぶやいた。
もしその二択しかないかったらどうするだろう、と、薫子は考えた。

私なら神様の生贄になってこの身を捧げるほうがずっといい。
この村には返しきれない恩がある。

自分の命と引換えにこの村が救われるのなら、これほど嬉しいこともない。
そう考えてゴクリと唾を飲み込んだ。

話題はまた盗賊のことへ戻っていて、今日はどこどこの家が襲われたという話しになっている。
生贄の話はすでに立ち消えたみたいだ。

「明日はどこの家が襲われるか」
「家とは限らない。どこでも襲われる可能性がある」
「こちらが前もって準備しておくことはできないか」
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