縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
千桜と冴子が家に戻っていないことがわかったからだ。
薫子は体の体温がスッと冷えるのを感じていた。

昨日の出来事を思い出し、ふたりが切神の怒りをかったのだとすぐにわかった。
薫子はころげるようにして本殿から寝室へと戻った。

「そんなに急いでどうした」
切神は布団の上で正座をして薫子が戻るのを待っていた。

薫子は肩で呼吸をしながら、切神の前に座った。
「切神さま、千桜と冴子になにをしたんですか」

質問する声が震える。
縁切りの神様ができることと言えばひとつだけ。

それは、縁を切ることだ。
「この村との縁を切った」

冷たい言葉に薫子の体が硬直した。
目を大きく見開いたまま動くことができない。
< 84 / 176 >

この作品をシェア

pagetop