縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
それを確認した切神は安心シたように頷き、救急用具を取りにくと、またすぐに戻ってきた。
切神が持ってきた焦げ茶色の木の箱の中には薬草や包帯が常備されている。

「これを塗っておけばすぐに治る」
切神が敵輪よく薫子の指先に薬草を塗りつけて、その上を包帯で巻いていった。

ケガの割に大げさに見える処置だったけれど、切神は満足そうにしている。
「続きは私がやる。薫子は休んでいるといい」

「そんな、これくらいのケガどうってことはありません」
そういう薫子を強引に寝室へと押しやってしまった。

土間からは包丁の小気味いい音が聞こえてくる。
その音に耳を傾けながら薫子は小さくため息を吐き出した。

切神はきっと根はいい人なんだろう。
それは薫子への扱いでよくわかる。
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