縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
そして弟が狭い隙間に指を入れて中のお金をかき出しているのだ。
賽銭泥棒!!

咄嗟に薫子は「こら!」と声を上げて駆け出していた。
ふたりの子どもたちが振り向き、勢いよく逃げ始める。

石段を駆け下りる手間で弟の方が派手にコケてしまった。
薫子がすぐに駆け寄ろうとしたけれど、男の子は自力で立ち上がると怯えた視線をこちらへ向けた。

今にも泣き出してしまいそうな顔に、薫子の足が止まる。
「神様ごめんなさい! 俺たち親がいなくてご飯が食べれなかったんです!」

男の子の叫びが暗闇にこだまする。
途中まで石段を下りていた兄が慌てて引き返してきて、男の子の手を掴んだ。
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