紅色に染まる頃
結婚式の準備も着々と進む。

親族のみで行う神前式はともかく、ホテルでの披露宴は招待客が多く、リストアップするだけでもひと苦労だった。

ようやく招待状の発送を済ませると、次は引き出物や引き菓子などを話し合う。
本堂家も小笠原家も代々お決まりの物があるとのことで、自分達もそうすることにした。

「本音を言うと『京あやめ』の和菓子を引き菓子にしたかったのですけど、こんなにお客様が多くては無理ですよね」
「そうだな。しかもあそこの半生菓子は作り置きが出来ないから、店主一人では不可能だよ」
「ええ、そうですよね」

美紅は頷いて、小笠原家が懇意にしている京都の老舗専門店の金平糖とボンボニエールにすることにした。

「話をしていたら、なんだか『京あやめ』の和菓子が食べたくなっちゃいました」
「はは!じゃあ買いに行こうか」
「え、今から?」
「うん。だって夕方には売り切れるだろ?」

昼休みに合わせて、二人は車でお店に向かった。
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