紅色に染まる頃
迎えた翌週のパーティー当日。

本堂リゾートの所有するホテルに、美紅は紘やエレナと一緒に向かった。

「美紅ちゃん、ほんとに着物が似合うわね。さすがは生粋のお嬢様」
「そんな…。エレナさんこそとっても綺麗。大丈夫かしら、兄さんがヤキモキしちゃうかも」
「大丈夫よ。私は紘しか目に入らないから」

うわっと美紅が仰け反った時、紘がエレナの肩を抱き寄せて頬に口づけた。

「俺もだよ、エレナ」

ヒー!と美紅は顔を真っ赤にする。

(ここはどこ?日本よね?こんな、公衆の面前で…)

両手で頬を押さえながらロビーを横切っていると、こんばんは、と声がした。

顔を上げると、タキシード姿の伊織が近づいて来るのが見えた。

「お越し頂き、ありがとうございます。紘さん、エレナさん」
「こちらこそ。お招き頂きありがとうございます」
「早速会場にご案内致します。どうぞこちらへ」

促してから、伊織は小さく美紅に話しかける。

「こんばんは。来てくれてありがとう」
「こんばんは。こちらこそ、お招きありがとうございます」

伊織の優しい微笑みに、美紅はドギマギして視線を落とす。

案内された会場は、きらびやかなシャンデリアがいくつもある、豪華で広いバンケットホールだった。

(わあ、なんて華やかなの)

人々の装いもゴージャスで、美紅は早くも気後れしてしまう。
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