紅色に染まる頃
「まあ、なんて立派な造りなのかしら」

山下公園に程近い歴史あるホテルに入ると、美紅は館内を見渡して感嘆のため息をつく。

「古き良き時代が刻み込まれているようですわ。時を重ねてきた重みが感じられます」
「そうだね。ここは横浜市認定の歴史的建造物、近代化産業遺産なんだ。マッカーサー元帥やチャーリー・チャップリン、ベーブ・ルースも訪れたことがある」
「とてもクラシカルでオーセンティックなホテルなのですね。この大階段も、重厚で優美で、素晴らしいです。あ!本堂様。ジオラマや年表も展示してありますわ」

美紅は目を輝かせて展示物に吸い寄せられる。

じっくりと一つ一つに目を通す真剣な美紅の横顔を見ながら、伊織はここに連れて来て良かったと微笑んだ。
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