紅色に染まる頃
そしていよいよ、宿の名称も決まる。

日常生活から離れ、ゆったりと贅沢に時間を使って頂きたい、とのコンセプトから『時の宿 京都東山』と名付けられた。

正式な開業は10月11日、それに先立ちプレオープンは10月5日からと決まる。

家具や内装が整うと、写真をふんだんに使ったパンフレットを作り、ホームページやSNSも開設した。

京都らしさを感じられる和のテイストでまとめ、英語とフランス語はエレナが翻訳してくれた。
それだけではなく、外国人観光客からの電話やメールでの問い合わせ窓口もエレナが担当してくれることになった。

予約の受け付けを開始すると、他の宿ではここまで細やかに外国語対応してくれないから助かると、エレナの対応が決め手となり予約を入れてくれる人もいた。

関係者や株主を招いてのプレオープンが近付き、美紅も伊織も3日前から現地入りして準備に追われた。

「最終確認は大丈夫?」
「はい。スタッフ皆でシミュレーションしながら確認しました。チェックリストも全て完了しています」

伊織は美紅の言葉に頷くと、集まったスタッフ達を前に話し出す。

「いよいよ明日、ここ『時の宿 京都東山』がプレオープンとなる。この宿のコンセプトは『贅沢な時間をお客様に』そして我々スタッフのポリシーは『お客様一人一人に最高のおもてなしを』この言葉を忘れず、ここでの時間がお客様にとって忘れられない素晴らしい思い出となるよう、皆で力を合わせて心を尽くしていこう」
「はい!」

気合いのこもった皆の返事に、伊織も大きく頷いてみせた。
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