紅色に染まる頃
「そろそろホテルに戻ろう。このままだと肝心の明日、寝不足でフラフラになるよ」
日付が変わりそうになる頃、伊織が美紅に声をかける。
スタッフが誰もいなくなった後も、美紅はあれこれと確認作業をしていた。
「そうですね。あとは明日に備えてしっかり休みます」
「ああ」
二人で連れ立って、すぐ近くのホテルへと歩き出す。
「なんだか不思議だな。君と出会って、ちょうど1年か」
伊織は初めて美紅と会った公園での出来事を思い出して苦笑いする。
「振り袖姿で泥棒を倒そうとしていた君と、まさか1年後にこんなふうに大きな仕事をしているなんてね」
「そ、そうですわね。本堂様には、珍しいわたくしの一面をお目にかけてしまいまして…」
「珍し…くはないでしょ?」
「は?それはどういう意味でしょうか?」
真顔でキリッと見つめられ、伊織は思わず、ひえっと首をすくめる。
「本堂様?!」
「いや、ごめん。珍しい、珍しいとも。一見すると奥ゆかしい令嬢が、振り袖着てるのに泥棒に立ち向かうなんて、そうそう見られるものじゃないよね」
美紅は更にムムッと顔を険しくする。
何かのスイッチが入りそうで、伊織は慌てて真剣に否定した。
「冗談です、ごめんなさい」
「それなら良かったです」
美紅はようやく頬を緩めて頷いた。
「でも本当に感謝している。この一年、ここまでやってこられたのは全て君のおかげだ。ありがとう」
「本堂様…」
「俺は君を心から信頼して頼りにしている。俺にとって、誰よりも君が一番頼もしい。どうか明日からもよろしく頼む」
伊織は立ち止まって美紅に右手を差し出す。
「わたくしも、大きな挑戦をさせて頂けたことにとても感謝しております。素敵な宿にしていきましょう」
「ああ、必ず」
美紅は微笑んで、伊織と固く握手を交わした。
日付が変わりそうになる頃、伊織が美紅に声をかける。
スタッフが誰もいなくなった後も、美紅はあれこれと確認作業をしていた。
「そうですね。あとは明日に備えてしっかり休みます」
「ああ」
二人で連れ立って、すぐ近くのホテルへと歩き出す。
「なんだか不思議だな。君と出会って、ちょうど1年か」
伊織は初めて美紅と会った公園での出来事を思い出して苦笑いする。
「振り袖姿で泥棒を倒そうとしていた君と、まさか1年後にこんなふうに大きな仕事をしているなんてね」
「そ、そうですわね。本堂様には、珍しいわたくしの一面をお目にかけてしまいまして…」
「珍し…くはないでしょ?」
「は?それはどういう意味でしょうか?」
真顔でキリッと見つめられ、伊織は思わず、ひえっと首をすくめる。
「本堂様?!」
「いや、ごめん。珍しい、珍しいとも。一見すると奥ゆかしい令嬢が、振り袖着てるのに泥棒に立ち向かうなんて、そうそう見られるものじゃないよね」
美紅は更にムムッと顔を険しくする。
何かのスイッチが入りそうで、伊織は慌てて真剣に否定した。
「冗談です、ごめんなさい」
「それなら良かったです」
美紅はようやく頬を緩めて頷いた。
「でも本当に感謝している。この一年、ここまでやってこられたのは全て君のおかげだ。ありがとう」
「本堂様…」
「俺は君を心から信頼して頼りにしている。俺にとって、誰よりも君が一番頼もしい。どうか明日からもよろしく頼む」
伊織は立ち止まって美紅に右手を差し出す。
「わたくしも、大きな挑戦をさせて頂けたことにとても感謝しております。素敵な宿にしていきましょう」
「ああ、必ず」
美紅は微笑んで、伊織と固く握手を交わした。