恋愛教育のススメ〜イケメン副社長はド天然?教育係を任せれましたが地位は要らないので解放して下さい〜
「まあ仕事とド天然王子の疲れで」

ははっと乾いた笑いでガーッとハイボールを飲み肩を落とした。

「仕事の話は聞いても分からんが千晶ネタなら聞くぞ」

平日の今日はお客さんも少なくマスターも忙しくないらしい。

だったら…

「副社長に昔好きな人が居たの知ってる?」

お酒の力で直球勝負!
まずはそこを探らないと教育の方向性も考えつかない。

「知っちゃあ居るが…まあ俺とあいつも付き合い長いからな」

丸く削った氷をグラスに入れてウイスキーを2フィンガーほど注いで指でくるくる回す。

「私とあの天然を助けると思って!お願い」

珍しく上目遣いでお願いすると、

「お前も理由を話すならな」

カウンターに両腕を乗せて目線を私と合わせてニヤリと笑う。

(この顔に嘘は付けないな…)

一晩過ごした事は端折り彼の恋愛感を話すと一度グラスに目を落として静かに話し出した。

「あいつ家庭教師の先生を好きになったらしいんだよ。身体が弱い儚い感じの女の子だったらしい」

私とは真逆です。
何がハキハキ話す年下が好きだよ。
やはりあの好きなタイプは嘘と発覚。

「大学を無事受かって彼女に告白しようと自宅に行ったら」

グラスを軽く揺らす。

「彼女は発作で倒れていて意識が無くて病院に搬送されたらしいけど…」

悲しい顔でマスターはグラスに付いた水滴を指でなぞる。

「告白は…出来なかったと…」

悲しい顔がもっと悲痛な表情に変わり静かにウイスキーを飲み干した。

あの時の…

ーーいつまでも一緒にいたい。叶うならずっと部屋に閉じ込めて僕が身の周りの世話をしたいんです

この言葉は彼女に対して抱いた感情だったんだ。

「まあ千晶を宜しく頼むな。お前が一番あいつに近い存在なんだよ」

頼まれても荷が重い。
でもほっとくなんてもっと出来ない。

「出来るだけやってみる」

「そうか!健闘を祈る!!」

マスターと話して彼の恋愛遍歴を聞き少しは方向性が見えてきた気がして気持ちが楽になる。

健闘を祈られる意味が分からないけど酔った私達はグラスを豪快にぶつけ微笑みあった。
< 12 / 31 >

この作品をシェア

pagetop