恋愛教育のススメ〜イケメン副社長はド天然?教育係を任せれましたが地位は要らないので解放して下さい〜
私の頭の中では皆んなが知る歌が流れてる。
あ〜る晴れた昼下がり…
ショッピングモールに続く道…
ワゴンタイプの高級車はスイスイと私を乗せて行く。
事の発端はいつもの急な電話から始まった。
『明日と明後日お休みですよね』
もう確認した上で話してるのは分かる。
副社長の権限下なら何でも社員の事は調べれば分かる事。
「これから休みが取れないので連休にしましたけど…それが何か?」
急に部長から命令かのように言われた連休に携帯片手にパソコンと模擬式の事前資料を確認する。
『明日付き合って下さい。自宅まで迎えに行きますから』
ブチッと要件だけ言われ切られた電話に何度も折り返したけど連絡取れず今に至る。
何処に行くかも分からず服装なんて気にもとめなかった。
「ペアルックですね」
その言葉に苦笑いしか出来ない。
カーキー色のブルゾンとファーベストのセットアイテムに白のハイネック。
黒のスキニーにハイカットのスニーカー。
(カジュアル過ぎと思ったけど…)
グレーのチェスターコートにオフホワイトのタートルネック。黒のスキニーにブーツの副社長。
「普通のデートと言うのを試したくて。白石さんしか頼れないでしょ?」
普通のと言うのが私も5年振り。
彼のデートの感覚の違いを確かめるべく最近出来た大型商業施設にやってきた。
「白石さんそっちじゃないですよ」
駐車場に車を停めて二人でモールまで歩く。
「迷子になると行けないので」
私の手を握って嬉しそうに微笑むから握られた手を離す事が出来なくなった。
「白石さんもご存知でしょうけど蘇芳は今変わろうとしてるんですよ。色々な人に幸せな気持ちになって貰いたい」
来年から蘇芳は老舗の看板にこだわらず動いて行く事が決まってる。
「うちの螺旋階段からの光景も良いですがこの光景も良いですね」
通りすがりの学生や年配のご夫婦。
そして家族連れ。
「蘇芳は特別な時に来る場所のイメージが強すぎる」
副社長の表情と言葉は重く聞こえた。
「それも必要ですよ。消えて行くお店がある中蘇芳は残ってる。思い出の場所が消えないのは嬉しいです」
「ありがとう。白石さんは本当に優しい」
何も特別な話をしたわけじゃないのに褒められて嬉しい気持ちになる。
「さあ先生。楽しみましょう」
真面目に話したのが恥ずかしいのか少し頬を染めて私の手を引き歩く。
副社長の背中が大きく見えて私は誇らしく思えた。
のもつかの間…
「要らないでしょう?」
「いやこれを抱えた白石さんを見たくて」
大きい…いや大きすぎるウサギのぬいぐるみを買うときかない副社長を引っ張り急いでお店の前を通り過ぎる。