恋愛教育のススメ〜イケメン副社長はド天然?教育係を任せれましたが地位は要らないので解放して下さい〜
どうしてこうなったんだろう…

「僕の恋愛の教育係になって貰えませんか?」

休み明けの私は副社長室に呼び出されて部屋に入るなり近づいて来る彼に後ずさりし最後は壁際まで詰め寄られた。

「申し訳ございませんが…絶対に嫌です」

冗談じゃない
彼が私を教育するならまだしも私が彼を教育する立場になれるわけもない。

「異動させるよ?って言っても?」

胸元を押し返して距離をとる事に成功した。

異動…それはさすがに考える。
彼なら簡単に国外追放とか出来そうだ。

「それってパワハラと言うんじゃ…」

「どうでしょう。僕は財閥の息子で副社長ですから」

“お金持ちだからなんとでもなる”
と言いたいんだろう。

言い方は丁寧で優しいのに脅迫じみた言葉

いつもは御曹司と言われるのを好まず財閥の力も副社長などの権力も振りかざさない。

ーー彼なりに考えた脅迫なのだろう

あまりの考えの可愛さにクスッと笑ってしまった。

「いつもはそんな陳腐な脅迫を口にするような副社長じゃないのに…?」

また距離を詰めてきた彼を真っ直ぐ見つめると、

「口にしないと僕の願いを聞いてくれないでしょう?」

下の者だからと言って上から目線で言わない彼は“お願い”で人を上手く回すタイプ

「副社長がお願いはずるいです」

見つめられた視線から目を逸らすけど頬に触れてまた私と視線を交わす

「何回でもお願いしますよ。白石さんじゃないと無理だから」

私を知ってるからこんな言い方をするんだ。
頼られたら受けてしまう自分の性格を呪いたくなる。

「はぁ…分かりました。お引き受け致します」

「しっかり者で人を見捨てられない白石さんの事好きですよ」

フッと笑っていつもは見せない勝ち誇った顔を見せた。

(これはもう諦めるしかない)

「白石さんにお願いを聞いて貰うだけでは申し訳ないと思うので報酬を支払うべきかと。白石さんの見返りを考えました」

見返り?
そんな物望んでない!

首を横に振り「要りません」と慌てる私を気にもとめず天然で人たらしの王子様は少し宙を見て、

「永久不変の確固たる地位ではどうですか?」

と綺麗な顔で微笑む。

本当に意味が分からない…
お金持ち的な考えなのか?彼が変なのか?
微笑んだ顔で私が頷くのを待ってる。

(気にする必要ないかな。言ってる意味も分からないし)

深く考えるのをやめて微笑む彼とは真逆の表情で頷くと「契約成立ですね」と私に握手を求めてきた。
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