君に僕の好きな花を
(とりあえず実家に戻って就活しなきゃな……)
今の私は職なしだ。憧れていた都会から汚れた紙ナプキンのように捨てられて、ここに帰って来た。今の私には何もない。でも、落ち込んでいる時間は与えてもらえない。
実家に向かって歩き出す。途中でバスに乗り、窓の外から地元を見た。この辺りは何も変わっていない。商店街も、神社も、何もかも……。
ある停留所でバスが停まる。一人の男性が入って来た。少し長めの前髪に、どこかオドオドした様子、黒い長いコートを着ている彼は都会では真っ先に職質されるだろう。
(この人、どこかで見たことある……)
そう思いながらジッと男性を見ていると、パチリと目が合ってしまった。すると男性は「佐倉さん!?」とバスの車内中に響くほどの大声で言う。視線が集まって恥ずかしい……。
「あ、あの、隣座っても?」
髪を触り、どこか声を上擦らせながら男性は訊ねる。周りの視線は変わらず私にーーー否、私たちに向けられていて、私は「どうぞ」と小声で言うことしかできなかった。
今の私は職なしだ。憧れていた都会から汚れた紙ナプキンのように捨てられて、ここに帰って来た。今の私には何もない。でも、落ち込んでいる時間は与えてもらえない。
実家に向かって歩き出す。途中でバスに乗り、窓の外から地元を見た。この辺りは何も変わっていない。商店街も、神社も、何もかも……。
ある停留所でバスが停まる。一人の男性が入って来た。少し長めの前髪に、どこかオドオドした様子、黒い長いコートを着ている彼は都会では真っ先に職質されるだろう。
(この人、どこかで見たことある……)
そう思いながらジッと男性を見ていると、パチリと目が合ってしまった。すると男性は「佐倉さん!?」とバスの車内中に響くほどの大声で言う。視線が集まって恥ずかしい……。
「あ、あの、隣座っても?」
髪を触り、どこか声を上擦らせながら男性は訊ねる。周りの視線は変わらず私にーーー否、私たちに向けられていて、私は「どうぞ」と小声で言うことしかできなかった。