なぜか御曹司にロックオンされて、毎日ドキドキと幸せが止まりません!
 ちなみにSNSによると、「お見合いパーティー」や「婚活パーティー」に参加する女性は、事前にネイルサロンやヘアサロンへ行ってから参加する者もいるらしいとあった。

 さすがに医療系で働いている私は、休日一日だけのために爪をデコることは難しい。
 またヘアサロンへ行ってアレンジをしてもらうほどの予算も、トータルで服を新調した事務職二年目の給料からでは、とてもじゃないが捻出できない。
 そのため、もともと持っていた桜色と白のマニュキアで自作フレンチ塗りをして、胸下まであるダークブラウンのロングヘアは、コテでふわっと毛先を巻いてみた。
 メイクも動画を見て、仕事へ行く時よりも華やかになるように、目許も口許もピンク系で統一させた。
 職場では小顔で目もくりっとして大きいし、イエベ春だし、紅月さんはパステルピンクが似合うんじゃないって言われたので、これもまたプチプラのものを購入した。

 自分ではヒラメ顔だと思っていたので、正直半信半疑だったけれど、意外とピンク系のメイクが悪くもないことにびっくりした。



 出かけに高校生の妹のあかりから「お姉ちゃん気合入ってるね」」なんて言われたけれど、女性参加者で私のような「高見え買い」の服装や、自己ヘアアレンジっぽい人は見当たらない。

 気合が入りすぎても男性に引かれてしまう、とネットには書いてあったが、どうやら年収が三千万など桁違いに稼いでいる男性相手のパーティーでは違うようだ。
 次からはどんなにお金がかかっても美容院でお願いしようかな、そう思ったときだった。

 バッグへ入れていた携帯電話が振動した。

 慌ててバッグから取り出すと、父からだった。

【巻き込んで悪かった。でもなにかしらの縁を繋げるために頑張ってほしい。】
 絵文字も何もない。
 簡素なその二文に父のいまの思いがすべて込められているような気がして、私は唇をぎゅっと噛み締めた。

 お見合いなんて乗り気じゃないけど、服装だって気恥ずかしいけど、でも家のためになんとか今日は頑張らなくちゃ。

 たとえ結婚に繋がらなかったとしても、なにかしらの縁は繋げるかもしれない。

 そう思うと気が楽になった。

 私は軽い足取りで会場入りをする。

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