なぜか御曹司にロックオンされて、毎日ドキドキと幸せが止まりません!
 会場に入った私は、まず受付で番号が書かれたネームプレートのようなものと、カップリングを成立させるためのB6サイズの用紙を一枚手渡される。
 私のネームプレーとには、「69」と書かれていた。

 今日のパーティーは、男性に対して女性参加者が十五人以上多いらしい。

 いつもであれば男性のほうが人数的に多いそうだが、ハイスペックということで、女性の応募者のほうがいくらか多かったようだ。

 縁だけでも繋ぎたい。
 そう思ったけれど、もしかして今日はそれすらも難しいのでは……? と考え始める。


 私は白い大理石風の床を歩きながら、すでに両扉が解放された白塗に黄金の手すりのついた洋風の観音開きの扉を目の前に、なんとなく嫌な緊張を胸に抱いていく。


 案の定、私はスタートから出遅れてしまった。

 フリータイムで自由に好きな相手と立食を楽しみながら歓談する流れだったのだが、女性よりも参加者が少ない男性は重宝され、あっという間にどの殿方もバリアを張るかのように周囲をぐるっと囲まれていたのだ。
 見ればどの男性もハーレム状態で、飲み物や軽食、はては額の汗の世話までされていた。

 お見合いパーティーに免疫のない私は、その光景を壁際から唖然と見送るしかできなかったのだ。

 けれどおかげで、パーティーの様子を俯瞰できた。

 一番人気の男性は広間の中心で神々しさを放つ、一番背が高くて、一番品がよくて、一番端正な面立ちをした二十代後半くらいの短い黒髪の男性だ。
 遠目から見ても高収入を得ているだろうと分かる上質なネイビーのジャケットに、インナーは白のこれもまた上質そうなラウンド襟のシャツ、それからベージュのチノパンに、ブラウンの革靴を履いていた。
 時折、囲まれた女性の隙間から見え隠れする左腕には、シルバーの腕時計が巻かれている。

 時計のことは詳しくないが、おそらくその腕時計もかなり高額なんだろうなと思った。

 目鼻立ちはくっきりとして、まるでモデルのような全体的に人好きをする甘い面立ちに、百八十センチ以上はありそうな長身。かといって、ほどよく鍛えそうな体躯。
 
 ジャケットの上からでも厚い胸板だろうことが予想できる彼のナンバープレートは、「29」。

 結構早い段階から申し込んだのだろうか。

 というか、こんなにもモテそうな如何にもなスペックを持つ男性が、なぜこんなところにいるのだろうか。

 私は不思議に思った。

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