なぜか御曹司にロックオンされて、毎日ドキドキと幸せが止まりません!
 ドクンドクンと心臓が揺れた。

 今までの男性に対してはなかった現象だ。
 たしかに間近で彼のことを目にしてしまったら、皿でも飲み物でも、彼に尽くしてしまいたくなってしまう。

『それでは五分間のフィーリングタイム、開始してください』

「よろしくお願いします」
 お互いに二人掛けのテーブルを挟み、形式的な挨拶を交わした。

「僕から自己紹介をしてもいいですか」
 早速にこやかに喋りだした彼は、五分間という限られた時間の活用方法に手馴れた感じがある。
 今回が初めての参加ではないのかもしれない。

「は、はい」

「僕は、神永龍樹(かみながりゅうき)と申します。数年前に会社を起業して、一応社長をやっております。歳は二十八歳で、趣味は愛犬と戯れることです。優しくて誠実な人がタイプです。できれば今日で結婚相手を決めたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いいたします」
 神永龍樹。
 自らをそう名乗った御曹司は簡単な自己紹介を終えたのち、私の目の前に右手を差し出してきた。

 これは……握手を求められているの?

 私も触って……いいのかな?

「あっ、えっと、」
 困惑していると、神永さんは軽く眉を寄せながら慌てて手を引っ込める。

「すみません。海外での仕事が多いので、ついくせで握手を求めてしまいました。気持ち悪いですよね」
 それから苦笑するその仕草が、遠目から眺めていたときとは違い、どこか親しみやすい印象を抱いた。

「いえ、大企業の御曹司様だとお聞きしていたので、こんなにも親しみやすい方だとは思いませんでした」
 自然と私の口元には笑みが浮かんだ。
 そうして手が差し出されていたあたりに、今度は自ら手を差し出した。










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