甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。




「…落ち着いた?」


「……うん」



落ち着いた、を、通り越した。

もう夢のなかにいるんだと思うことにした。


結局は一条くんだって犬丸を抱き上げればいいと思ってるところがあるから、ちょっとくやしい。



「今日は犬丸ひとりって言ってたからさ。
…寂しいかなって思ったんだよ」



甘くて、優しくて。

見知らぬ男たちが絡んできた昼間に見せていた顔と、いまの顔。


わかっていることは、この顔は犬丸にしか見せないこと。



「まあ、そんなの嘘だけど」


「え」


「俺の作戦勝ちだよな。どんまい犬丸」



な、な、な、なんてやつだ……!!

そうだ、一条くんってわりとセコいとこあるんだった…。



「風呂、入る?」


「そ、そしたら本当に帰れなくなっちゃうから…!」


「は?本当に帰すつもりねーんだけど」



あっ、そうだったそうだった。

変なこと言ってるのは犬丸のほうだった。


……って思っちゃうくらい一条くん自信満々なのなぜなんだいっっ!!



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