甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。




「………たっ、助けてルキくん…っ」


「へえ。…そこでルキくんとか。犬丸は俺に喧嘩でも売ってんのかな」



あ、終わった……。

こんな静かな場所でふたりきりでこの距離で喧嘩を売ってしまったなら犬丸ちゃん、明日から生きられませんよ、と。



「ふっ、じょーだん。今ならなんでも許せる気するわ俺」


「……お、怒ってません…?」


「それより嬉しすぎてニヤける」



魔法にかかってしまったみたいだ。


室内に設置された時計からカチ、カチと響いてくる音だって。

外から聞こえてくる鈴虫の鳴き声だって。



「犬丸、先に風呂入っていーよ」


「……いっ、いぬまるはっ、2番目でいいよ!」


「いやそれは申し訳ない」


「犬丸も申し訳ないんでっ」


「……じゃあ、一緒に入る?」



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