甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。




足バタバタしたい。

ア”ア”ア”ア”ア”って仰け反りたい…。



「え…っ、ひぃ…っ」



わ、え、どうする。

くるっと変えられた体勢と、覆い被さってくる影。


スムーズすぎて困惑したときには一条くんに見下ろされていた。



「…ちょい明るすぎるか」



いいや、それダメっす。

若干落とされてしまった証明のほうが、この状況をナメにかかってる。


そんなことをしてはならないよ一条くん…。



「雨の音っていいよな」


「へっ、あ、……犬丸もすき」


「とくに夜の雨の音ってさ。静かで落ち着く」



しとしとしと。

窓を叩いてくる水滴たちは会話してるみたいだ。



「あのう……、この体勢は…」


「…まあ。よくはない」


「ないよ…っ!なんかっ、……ダメじゃない…?」


「んー…」



噛み合っているようで噛み合ってない、と思ったのは。

逸らす犬丸と合わせてくる一条くん。


そんな単純な違いだけ。



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