甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。




「一条くん、」


「ん?」


「…暁って、なにをするグループなの…?」



よく分かってない。

よく、わかってないんだ犬丸は。


名前は覚えた、仲間たちの感じも知った、何かしらの権力があることも、名前が上がっていることも。


でも結局そこでは何をするの?


大人数で集ってまで、なにをするの?



「…俺もそれは分からないんだよ」


「わからない…?でも、総長さんなんだよね…?」


「名前だけだよ、そんなの。俺が入るよりずっと前からあったグループだったし、言っちまえばどんどん後輩に引き継いでは形すらない“何か”を守りつづけてるような感覚かな」


「…形すらない何かって、」


「たとえば“誇り”とか“名前”とか。その誇りだって、結局は俺たちがそう思いたいってだけの自己満足なんだよな」



じゃあ一条くんはその“誇り”や“名前”を欲しいがために暁に入ったんじゃない、ということなのかな。



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