甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。
「ちょうどさっき……、今ならまだ間に合うかもしれないっっ!」
隣にあった少々お高めな牛乳を購入して、私はスーパーを飛び出した。
ちょうどさっきなら、まだ近くを歩いている可能性がある。
3本まとめ買いをした高校生だと。
情報としてはわりと十分だ。
鼻を効かして、耳をピンと立てて。
いつも逃げる専門にしている足は今日は探す専門にするんだ犬丸。
「いたっ!あの人だ……!」
見知らぬ制服姿。
重さが加わって張りつめたビニール袋と、そこから覗いた牛乳パック。
「すっ、すみません……!!」
「…おっ」
「その牛乳をひとつっ、こちらの高級牛乳と交換してもらえませんか…!1本360円ですこちら!!ぜったい美味しい万能な牛乳さんですっ!」
犬丸の前世、たぶんセールスマンでもあったと思う。
通販番組でミキサーとかお布団とか、幅広く売ってた説浮上。