甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。
「ちょ、ちょうど1つだけ奇跡的にあって…!」
「…そうなんだ。ありがとわんこちゃん」
ふっと眼差しを溶かして微笑んだ沙蘭くん。
そして私が差し出した牛乳を受け取ろうとした───が。
ピタッと、なぜか止まる。
「……また牛乳ってのがさ…、はあ……、嫌なんだよわんこちゃんから渡されるの」
「…えええ……」
嫌って、犬丸が牛乳を渡すことがそんなに沙蘭くんにとって地獄なんすか…。
あたま抱えてるし、「大人になっちゃったのか…」とか言ってるし…。
犬丸、ワケわからん。
すると何かに気づいた一条くん。
そーいうことだったのかと、口を開く。
「安心しろ沙蘭。あの日、俺は何もしてない」
「……してないって、泊まったわけじゃん」
「それ以外で満たされたとこがあったんだよ。つーか犬丸なんか、22時前には寝てたぞ。俺は本当は映画とか一緒に観たかったってのに」
「………ってことは?」
「シてない。犬丸の反応見て分かるだろ、なにも変わってないこと」