甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。
「マル子、それ600円もすんだから噛みしめて食べてよ」
「………味しない…」
「…アニメショップでも行こうか?」
「………いかない…」
お高めなアイス。
犬丸の聖地でもあるアニメショップ。
こんなにも喜べないことなんか初めてだ。
「マル子さー。ご主人さま、俺にしてみる?」
そのときだった。
勢いよく店内に誰かが入ってきたと思えば、端の席で耳を垂らしていた犬丸の手からアイスが落ちた。
「だれ?」
「あ、初めまして。俺、今日から転校してきた人間です」
「所属はどこ?」
「…所属?なんのこと言ってるかサッパリだなー」
「しらばっくれないでくれる?こんなオタク犬に裏なく構う物好きなんか、どこかの溺愛総長さんくらいだよ」
こんなオタク犬て……。
仲間ならもっと思いやりのある言い方とかってできませんか…。
そのとおりですけれども。
でもあなたは犬丸の教育係でもあるのに。
ねえ……沙蘭くん。