甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。
「なんであの場所にいたの?」
「……アイス、食べさせてくれるって…」
そのアイス屋さんは、一条くんを見かけた雑貨屋さんからまた離れた場所に位置していた。
泣いてしまった犬丸は村雨くんに連れられるまま、道なんかいちいち確認してもいなくて。
「あのアイス屋の裏手がどこに続いてるか知ってる?」
「……えき…?」
「ちがう。常人ならぜったい踏み込んではならないって言われてる繁華街───游黒街(ゆうこくがい)」
ゆー、こく、がい。
聞いたことがない。
聞いたことがなくて当たり前だ。
だってそこは俗世間に対して表面的には「遊楽町(ゆうらくちょう)」と親しまれているらしいのだから。
本当を知っている人しか知らない街。
そこが────游黒街。