甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。
だってそれくらい戦うべきではない組織ってことでしょ…?
相手にしちゃダメってことでしょ…?
もしかすると仲間たちの命に関わるかもしれない。
犬丸はビビりだから。
怖いことからは逃げるのが仕事だ。
「…わんこ、泣いたの?」
「っ!」
そして次は頬に残った跡に気づいて、沙蘭くんは覗き込むみたく私の髪を耳にかけてきた。
「いやっ、これはっ、……おけしょう…」
「イマドキの慣れてる高校生は“メイク”って言うんだよ、わんこちゃん。…転んだりは?」
「してない…」
「……はー…。よかったよ無事で。帰ろう」
あのときなんで泣いたんだろう犬丸…。
痛いこととか怖いこととか、なかったのに。
そういえば一条くんを町で見かけてからというもの。
ルキくんを考えること、してなかったね。