甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。




あの人はめちゃくちゃサラサラだったな…。

遠目からも分かっちゃった。


髪をとかすことを諦めた犬丸、ぎゅっと思わず彼の袖を握った。



「ん?いぬまる?」


「……………」


「いぬまる?」



あの女性はどちら様ですか。

そちら様だったとしたら犬丸にこんなことしても良いのですか。


マミさんのときはあんなにも厳しくしてたのに、あの女性には違った…。



「……ひっぱった、だけ」



ぷいっと一条くんから顔ごと逸らす。

しかしここで大人しくしてくれないのが犬丸のご主人さまなのだ。


軽々くいっと顔が戻されて、犬丸の対抗心は塵となる。



「犬丸、なんでおまえ牙出してんの」


「っ、」


「それを向けていい相手じゃねーな。爪も立てんなよ」


「あっ、はい…」



すみませんもうしません。

ちょっとだけ背伸びをしたかっただけなんです。



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