甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。




「これね、クリアポケットになってるから雨にも濡れなくって」


「……へー」


「へへ。“痛バッグ”なんて世間からは言われてるらしいのですがっ」



これを背負って歩く幸福感。

休日のアニメショップに行ったときなんかはもう、ルキくんとデートしているような気分になる。



「だろーね。見ててイタいもん」


「でもお父さんにも、いつもの犬丸を見せたほうが落ち着くと思ったんだ」


「…みんな見てるよ」


「えへへっ、うれしい」


「……嬉しいんだ」


「だってこれが犬丸だから!」



犬丸からルキくんを取ってしまったら、きっとすごく寂しい人生だった。


こんなこと言うのも変だけど、ルキくんがない犬丸と、ルキくんがある犬丸。

一条くんが選ぶのだって、後者なんじゃないかなって思う。



「じゃあ俺は?」


「え?」


「…ぼくは、病気がある僕が……俺なの?」



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