甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。
放られるように離れた場所に転がっているリュックや私物。
寝てしまっていたらしい私と、ずいぶん前から起きてはいたという村雨くん。
両腕を縛られて捕獲されたパターンなら過去にもあったけれど、プラス両足は初めてだ。
「ひええ…っ、なにこれ動けない……!やだぁぁぁ怖いぃぃ…っ、助けて村雨くん…っ」
「無理。俺も同じ状況だから」
「……なにがどうなって…、こうなった…?」
「わかんない。俺も気づいたときにはこうなってた」
助けを呼ぼうにも呼べない。
だれが私たちを拉致したのかも分からない。
犬丸を狙ってきているのか、それとも村雨くんを狙ってきているのか。
でも、この犬丸。
もうずっと狙われて守られる生活をしてきていたから。
洞察力、上がっちゃってるんだよ。