甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。
すると奴らは犬丸たちの私物に目を付けた。
逆さまにしてドサドサと中身を散らかすと、「なんだこれ」と言いながら笑い出す。
「おい見ろよ、こいつヤバくね?ただのオタクじゃねーかよ!」
「まじキッメェ。おまえこんな女がいーの?」
「ぎゃははっ!くーじょーるき、だってよー?アイドルオタクも無理だけどアニメオタクは論外だよなァ!」
いーよいーよ。
笑いたいだけ笑うがいいさっ。
日本のアニメがどれだけ海外から評価されてるか知らないでしょ。
自分たちだって1度もアニメ観たことないわけじゃないくせに!
「……マル子、」
笑っている男たちに聞こえない声で、コソっと耳打ちしてきた村雨くん。
「俺の制服のポケットにカッターが入ってる」
「えっ…」
コクりとうなずかれて、思わず同じものを返した。
ごくっと唾を飲みながらどうにかバレないように……。