甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。




けれど今日は違った。

今日だけは犬丸には言葉だけを先に贈って、彼は傷だらけの親友の元へ。



「俺、頭いーからさ」



一条くんのそんな行動を、だれもが優しい顔をして見守る。



「絶対なくしたくない宝物は部屋の机に飾ってあんの。そうすれば落とすこともないし、汚れたりもしないだろ」



言いながら一条くんは、制服のポケットから取り出す。

村雨くんがなくしてしまったと泣いていた宝物の1枚を。



「……それ…」


「すこし前に犬丸が拾って、俺が預かってた」


「……なんだ……、よかった…」



一条くんから受け取った村雨くんは、ぎゅっと大切そうに握りしめた。


また一筋、その頬にポタリと落ちる涙。

ごめんとか、ありがとうとか、言葉にされなくても伝わってくる。



「…駄目だったよ、おれ。やっぱり僕は…一条がいないと目立てないような奴だからさ……、すぐ、追い出されちゃって」



ばかみたいだろ、と。

吹っ切れたように笑っていながらも、すごく寂しそうだった。



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