甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。
『単刀直入に言うと、俺の近くにいてほしい』
『……それは…どう、いう、』
『難しいことは後々でいいから今は言わねーけど。とりあえず、俺はお前に惚れてる』
すこし前に、こんな会話がありました。
そう、あの例の体育館倉庫に閉じ込められた日。
一条くんは確かに犬丸にそんなことを言ってきたのだ。
「いぬまる」
ほら、これだよこれ。
こんなあっっまい声、聞いたことある……?
机の下に逃げこむ私のすぐ目の前、しゃがんでまで覗きこんできた。
「いいバイト、あるっつったら?」
「……へ……」
「んじゃあ今日の放課後な」
「わあ…っ!」
犬丸、無事にふわっと抱き上げられる。
一条くんってこうなんだ。
手を引くとか、引っ張るとか、そうじゃなくて。
抱き上げるとか、抱きかかえるとか、表現するならそんな感じ。