甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。




「犬丸、なんか食べる?」


「……ゼリー…」


「ゼリー?」



口当たりがいいものを食べたい。

一条くんに抱えられながらも素直にうなずくと、どういうわけか「かわいすぎだろこれ」とか言いながら頬を寄せられる件。


………ひいぃっ、食べられちゃうぅぅ…っ。



「沙蘭、ゼリーだって。冷蔵庫にある?」


「…僕は君たちの執事じゃないんだけど」


「俺の下ではあるだろ」


「……はいはい、ゼリーね」



どうしてこんな状況下に身を置いているのかざっと振り返ると、いいバイトがあるって言ってくれた一条くん。


放課後に紹介してくれるとのことで、学校が終わった私はさっそく一条くんに案内されたのだけど……連れられたのは学校近くの駐車場だった。


そこに1台のお高そうな外車が止まっていて、流れるままに乗せられました犬丸。

運転手さんは今も覚えてるけど、単なるタクシードライバーさんとかじゃなくて………言うなれば執事さん、みたいな。



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