甘く優しくおしえて、ぜんぶぜんぶ。




「つーか、猫は?」


「あら…?さっきまで一緒にいたのだけれど……そうそう!ジュースが飲みたくなったからって買いに行ったんだわ!」


「…相変わらずあいつは猫だな」


「ふふふ。そこがカワイイっ」



しばらくするともうひとり、他校の制服を着用したイケメンが現れる。



「…よし、とりあえずは揃った」



私のすぐ近く。

形の良い唇が引き上げられた。



「あ、ごめん。部屋まちがえたかも」


「あってるよ、猫」


「…新入り?」


「それはこれから千明ちゃんから説明されるんですって」



……なんすか、この空気。

軽いんだけど重くて、賑やかなんだけど静か。


あのね……?

何度も改めて言うけどね、犬丸はごく普通のオタクなの。


たまたま釣られてこの高層ビルに来ちゃっただけの、しがないオタクでしかないんだよ……?



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